のび太と夢幻三剣士


結局のところ,プログラムなのか,自己の意志なのか.

 この作品は,自分が映画館に出向いていって見た,記念すべき最後の作品です.
まあ,そんなことはどうでもよろしい.
この話は,「気ままに夢見る機」という,安直極まりないネーミングの(ドラの道具は大抵そうだが)機械専用のゲームソフト,
「夢幻三剣士」の世界を冒険する話である.
ただの遊びでは・・・とも思えるが,現実世界にゲーム中の人物が登場したりしているので,遊びじゃなかったということにしておこう.

その為か,実に非未来的な言葉が出てきます.
「なんでえ,えらそうに.ひっこんでろ,ヒョーロク玉!!(67頁)
兵六玉なんて,今の子供でも使わないと思うんですが・・・思いこみですかね?
兎も角,22世紀に厳然と残っているとは思えない.
舞台が昭和49年だということを考慮すると,いくら語彙の少ないジャイアンでも知っている思われる.
この機会は,発信器を付けた相手に合うように配役と名前を決め,その相手の国語力を図った上で行動して居るんじゃあなかろうか.


あまりにも稚拙な妖霊軍の戦略・戦術.

さて,本題と参ります.
ここで取り上げたいのは,ズバリ妖霊軍の戦略・戦術です.
猿4匹と狸1匹の加勢ぐらいで,もろくも崩壊してしまいました.
今までの大長編で,ここまで弱かった軍隊は見たことがありません.
犬の王国軍,アトランティス軍,魔界軍,PCIA,鉄人兵団,地底軍,妖怪軍,ニムゲ同盟,ブリキン軍.みんなそれなりに善戦しています.
しかし!こいつらはやられっぱなし.矢張り問題があるのです.
これは叱ってやらなければなりません.

妖霊軍の初登場は,56頁です.
この時だけは,素手だったのでのび太は退散しました.賢明な判断です.
89頁ではグリム市が陥されたという報告が入ります.なんだ,強かったのか?

そして妖霊軍はアンデル市の攻撃を開始します.スパイドル将軍率いる土の精軍団は四方を包囲し,
アンデル守備兵は,残りわずか9名.(133頁)
圧倒的に妖霊軍有利.よもや負けはしまい.
深夜,総攻撃の下知が下る.しかしすぐ異変に気づく.

城兵がおらず,門が開いている・・・

明らかに空城の計.ここは斥候でも出すのかと思っていたら,
騙されぬぞ!必ずどこかに隠れているのだ.城内隈無く探せ!!
ええ!?それでいいの?
まあ,この時すでにほとんど兵はいなかったから,そうしたのかも知れない.
直後,地下倉庫から,「やーい,ドロンコお化けこここまでおいで.」と聞こえてくる.
いくら何でもこれでは動かないだろう・・・
地下倉庫か,みんな続け!!
やっちまったあああああ!!!
少しぐらい怪しめ!あからさまに挑発しているじゃねえか!!
果たして水攻めにあい,先発隊はもろくも壊滅.スパイダル将軍は,1人逃げ帰ったのでした.
そしてオドローム大帝は,「失敗は許さぬ!!」と,スパイダル将軍を処刑.
まあ当然といえば当然でしょう.いくら勝負は兵家の常と言っても,こんな稚拙な策略で負けたんですから.
考えてみれば,スパイダル将軍は,城を囲むほどの兵を従えていたはず.
そんな大兵力が,城の地下室に全て入ったとは思えません.
おそらくほとんどは置いてけぼり.オドローム大帝が怒るのも無理ないです.
きっと大帝は,泣いて馬謖を斬る思いで,彼を処刑し,軍規を正したのでしょう.

しかし,その大帝閣下の大御心を知ってか知らずか,将官たちの無策ぶりはかわりません.
次に出陣したのは,百戦錬磨のジャンボス将軍.
まず投石機での攻撃を開始します.しかしドラの道具で,この攻撃は防がれます.
それを受けて,続いて繰り出されたのは水の精軍団.でもこれも防がれます.
それを受けて,続いて繰り出されたのは鉄の精軍団.でもこれも防がれ・・・・・・
あの,ジャンボスさん.これは兵の逐次投入というやつでは?一番やってはいけない方法です.
あのガ島でも・・・・(以下略)
しかしジャンボス将軍は,兵の逐次投入の件を棚上げして,
ええい,たよりない部下どもめ!!」と,全て部下のせいにします.
最悪ですね.
そうしてジャンボス将軍は,白銀の剣士(のび太)に一騎打ちを申し込みます.
白銀の剣の力は凄まじく,(白銀の剣士(のび太)の力ではない)ジャンボス将軍は片耳を切り落とされます.
ここでジャンボス将軍は巨大化.勝負に出ます.
同じ条件でないことは少し気にかかりますが,巨大化は自分の技ですから,まあいいでしょう.
すると,なんとここでタヌキさん達が暴挙に出ます.
秘密道具で,ジャンボス将軍を沈めてしまったのです!!
あなた達,「一騎打ち」ってわかりますか?手助けしたら「一騎打ち」じゃあないでしょう.
のびちゃんは,「ぼくにまかせて.」と言っていたのに.
でものびちゃんも誉められません.
映画のパンフレットに,
のび太くんもジャンボスを倒してすっかりいい気分.」と書いてありました.
武士道も騎士道もどうでもいいんですね.
何かジャンボス将軍が可哀想になってきたぞ.

ただしもっとまずい者がいます.トリホーさんです.
ジャンボス将軍の戦死を確認してから,不思議なポッケを奪取しました.
明らかに故意です.
嗚呼已んぬるかな・・・何故にこんな奴等ばっかり.
はっきり言って碌な奴がいません.
きっと,オドローム大帝も,頭を痛めていたことでしょう.
鬼岩城と逆ですね.主君一流,部下三流.

ところで,こんな奴らに連敗していた,
ユミルメ軍にも問題があるのでは.
兵士の行動を確認してみましょう.
135頁.不審者に対し攻撃.かなり浮き足立っています.
136頁.突然の訪問者を,人手不足という理由で登用.しかも士官待遇.
そして極めつけ.
152頁.弓兵曰く,「だめです.矢がすどおりしちゃう.」
はっ?
「すどおりしちゃう」?
誰に向かって言っているのですか.
白銀の剣士なんてどうでもよろしい.
城壁より身を乗り出す,白髭の人.
この人,司令官では?
司令官に向かって,「しちゃう」?
・・・・・・もうちと軍律を厳しくするべきです.
子供の浅知恵で撃退できたようなやつらなのに・・・

本題に戻します.
部下どもの不甲斐なさに激怒したオドローム大帝は,
自ら白銀の剣(しつこい様だが,剣士ではない)を倒そうとやってきます.
しかし,のび助の反則技によって取り逃がしてしまいます.
(ところで,この時のび助は,挙手してドラたちを起しているんですが・・・変な起し方だ.)

はたしてたうとうやられてしまひましたとさめでたしめでたしちやあんちやん


ところで・・・

ところで,作中で,迷言が連発(2回)されています.
126頁.竜が温泉に汗を流し込んだときに,のびちゃんが放った言葉.
「ははあ……つまり竜のだし汁?」
違います
だし汁ってあんた・・・

同じようなことを言ったやからがいます.
それは何と,我等がオドローム大帝.
163頁.「フフフフ.竜のだし汁の効き目か.たあいもない!」
だからだし汁じゃないってのに!
御竜樣は,御御汗(おみあせ)を温泉にお流し遊ばされたのです.無礼千万であります.

全然関係ないですが,パンフレットにこうありました.
「レーザーディスクなら(中略)いつまでも変わることのないきれいな音と映像が家庭で何度でも楽しめます.」
時代ですね.


総評

 どうなんですかねえ.この作品は・・・
まあ,最近のものに比べたらいいのかも知れません.
ドラちゃんの映画は,どんどん駄作になってきてますからなあ.
5段階評価で言えば,「丙」. ただ,主題歌は間違いなく駄作.
屁理屈だよ.ありゃあ.


BGMは,人材不足ながら,戦いに踏み切ったオドローム大帝にささげます.
「四條畷」.


四條畷

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