驚愕!授業用箒!!


恐るべき性能

初めての箒の授業の際, ドラコが,ネビルの思い出し玉を盗って空中で放り投げた.

ミネルバ先生曰く「16mもダイビングして掴みました」.
原文では,50フィート(15.24メートル)となっているので,こちらを採用する.
となるとハリーは15.24mの高さから急降下した訳だ.
玉の高さはドラコが「放り投げた」ので分からないが, 仮に同じ15.24mとする.
また,ハリーは地上50cmで取ったとする.
そして加速は一定の割合とする.
(なお,自由落下をしていた場合は,出力があまりに小さな値になるので,ここでは考えない.)
そうすると, 詰まり1.7344秒で玉が地面に激突することになる.

重要なのは.反応するまでに何秒かかるか,ということ.
脳が指令して行動を起こすまで,0.2秒はかかるそうだから, ここでは0.2秒としよう.
その分遅れる.よって0.5を此から引く.
1.534405738 その時間で14.74mを移動するので,
平均速度は9.60632m/sとなる.
よって瞬間最高速度は19.21265m/s.
時速に直すとなんと69.166km/h!
此により箒の出力は, 一秒で45.076kmとなる.
あな恐ろしや!起動1秒後には45km/h!!
途轍もない出力だ.

忘れてならないのがドラコが玉を放り投げたこと.
恐らくハリーとは逆の方向に放ったのだろう.
高く上がったとあるが,頭上だとほぼ間違いなく奪取される.
となればその距離を賄わなければならない分,当然速くならざるを得ない.

一番遅い場合を考えてみる.
落下と同時に降下し始めて,地面から1メートルでとった場合,
1秒後には35.28キロ. 低く見積もっても,一秒後には35.28km/h.
箒が高性能だということがよく分かる.
また普通なら慣性の法則で地面にたたきつけられるが,
それが無いと言うことはそれらの法則を一切無視していると言うことになる.
ドラちゃんのタケコプターですら80km/hの航続8時間.
箒なら燃料(バッテリー)切れもない.
魔法の神髄此処にありといったところ.



速すぎる「流れ星」

待てよ.これは学校の授業に使う箒だ.
どうやら「流れ星(シューティングスター)」らしい.
この箒は,古くなるとどんどんスピードが落ちてくるのだ.
この製造元のユーバーサル箒は1978年に倒産しているので,
少なくとも22年経っているはずである.
手入れが行き届いていたとしても,ここまで性能がよいのは不思議だ.

3巻に出てくる「炎の雷(ファイアボルト)」は,10秒で時速150マイルに達する.
しかし150マイルとは241.4km.
1秒に直すと24.14km.
最新鋭レース箒より「流れ星」の方が早いじゃないか.

出力を計算してみる.
授業用箒は,時速69.95km/秒の場合,
ハリーの体重を30kgとすると,出力は187.8W.
一方,「炎の雷」は,ハリーと同じ30kgの人間が基準だと100.58W.60kgの人間が乗ったとして,201.167W.
なんと,学校の授業で使う箒は,最新鋭のレース用箒より,87Wも高出力.「炎の雷」が60kg基準でも,13Wしか違わない.
なお,授業用箒は一番遅い場合でも,147W. 授業用箒はとてもはやかったのだなあ.



諸悪の根元はフーチにある.

しかし何故にこんなに速いのか.
もうここまで来ると改造しているとしか考えられない.
そんなに速い割には,「高い所に行くと震え出す箒」とか「どうしても少し左に行ってしまうくせがあるもの」があるようだ.
初心者が扱うのだから,安全なものにして貰いたいなあ.
時速45km/秒なんてべらぼうに速いのは以ての外.
こんなんで大丈夫なんかいと思っていたら,案の定ネビルが
事故を起こして骨折してしまった.
これはネビルの責任ではない.
危ない箒を与えたフーチの責任である.
箒の枝も揃えられていないようだ.
改造に精を出す前に,手入れに精を出して貰いたい.
この他にもフーチは,試合中ハリーが落ちそうになっていたのに素知らぬ風だった.
とても飛行術担当が適任だ時は思えない.即刻クビにすべきである.



ハリーに秘められたる天賦の才

しかし其れにもまして凄いのはハリーだ.
69.166km/hの速度で, およそ61.19km/hで逃げる玉を捕まえ,箒を水平にしたことになる.
無論玉を取ってからでは間に合わない.
こうすると玉を取ったことを脳が認知するまでにあの世行きである.
つまり,事前に体勢を変えながら取ったと言うことになる.
こんなこと出来る人間は少ないだろう.
ミネルバ先生が「首の骨を折るところだった」と言っているので,
(重力と慣性の法則を無視しているくせに)安全装置など無かったのだ.
少なくともこれだけは,誰にも負けないハリーの才能である.他は知らない.

戻る