高井田叢雲氏からのお便り

隣りの国に歴史を学べ
                  高井田 叢雲


一、はじめに
 先日、韓国政府は、ある会社が作った、来年度の中学校歴史教科書(前々回の『歴史教科書への提言』でとりあげたもの)に対して抗議をしてきました。どうも、その中の韓国併合・太平洋戦争に関する記述が、韓国の満足するないようではないようです。このような抗議は、何も今回に始まったわけではありません。しかも、その抗議は、毎回自国の主張を決して曲げない強いものです。そして日本政府は、その度に見解を曲げ謝罪してしまいます。この違いは一体、どこから、なぜ生じるのでしょうか? そこで私は、彼らの主張の元とも言える、韓国の歴史教科書を手に入れ、それについて調べてみることにしました。

 私が手に入れたのは、韓国の小学生が『国史』の時間に使っている教科書を、在日韓国人中学校で使える様に日本語訳した、『少年少女のためのわかりやすい韓国民族の歴史』(金 忠一訳編 ソウル書林発行)です。買ってきて、まずパラパラめくってみましたが、私は仰天しました。というのも至るところに『団結心の強い韓国民族』や『民族のたくましい精神』といった言葉が太字でちりばめられているのです。もしこんな事を日本史の教科書に書いたら、まず検定を通過しないでしょう。日本の社会科教育は『世界の中の日本』がテーマですから、やたらに愛国心を啓蒙するものはだめなのです。ここが、アメリカに占領され、アメリカの属国とされた日本と、他国に何度も侵略されながらも、自国を守り抜いた韓国民族の違いなのでしょうか? 

 さて、気を取りなおして細かい内容を見て行きますと、今度は驚愕しました。特に韓国併合前後からは、日本の歴史教科書と、大きな相違を見ます。例えば、伊藤博文の暗殺所は『安重根義士は、満州のハルピンで、侵略者の巨頭・伊藤博文を殺して、わが民族の積もりにつもった怒りを、爆発させました。』と、安重根を、わざわざ『義士』という尊称までつけていますし、創氏改名をした理由については『太平洋戦争を引き起こした日本は、戦争の勢いが不利になってくると、わが民族の、ねばりづよい、すばらしい精神をなくしてしまおうと、あちとあらゆる手段を用いました』と、あたかも日本が、戦局が不利になった腹いせに創氏改名をしたようなものです。その他様々な所では韓国の日本の歴史見解は異なっているのですが、それは最後にまとめて掲載しておきます。

 このように、韓国の歴史教科書は、日本人から見れば全く客観性を書いた危険な教科書です。しかし私はむしろ、このような教科書に畏敬の念を抱きます。なぜなら、それには『自国の主張』というものが入っているからです。幸か不幸か日本は、他民族による侵略という苦汁をなめたことがありません。争いといえば、南北朝時代にしても戦国時代にしても、同一民族同士の『内輪もめ』ばかりです。このような状況では、自分の意見を強く主張することより、全員との和を乱さないことが望まれます。しかし、世界は戦後の激動の中で自分の主張をしない国は相手にされない様になりました。その中で日本は、あくまでも各国との和を気にし過ぎました。その結果、『客観的』といえば聞こえはいいですが、主張が一グラムも無い教科書をつくることになってしまったのです。

 最近、韓国では現在の政権の下で、日本文化が解禁となり、続々と日本のマンガ・ファッションが韓国に受け入れられていると聞きます。それならば日本は、今こそ韓国の教科書作りの姿勢を見習い、自国の主張をふんだんに盛り込んだ教科書を作るべきではないでしょうか。そうでないと、日本と言う国は争い絶えない世界情勢に生きていくことは出来ないでしょう。


付録 〜その他韓国教科書の主張〜

 韓国併合後の日本の支配について
『近代化へむけて、国を発展させようとしていたわが民族を、かれらは、かれらの奴隷にするために、世界でもまれな、植民地政策を実行していたのでした。』 『わが民族の心からの願いである、独立のこころざしがとげられなくなると、独立の闘士たちは、いっそう、積極的で活発な独立をかちとるためのたたかいを、くりひろげるために、中国の上海に、大韓民国臨時政府をうちたてました。(中略)命がけで、侵略者の巨頭をねらい撃ちしようとする、勇敢な青年たちが、つぎからつげへと出てきました。』

韓国の独立
『ねばり強く、独立のために戦ってきたからこそ、堂々とむかえることができたものであります。踏まれてもふまれても、けっしてくじけることを知らない、わが民族のこころ意気を世界にしめし、長い歴史と、輝かしい文化をもつ民族として、十分認められたからこそ(後略)』


(原文ママ)






 先日,教科書に関して,メールをいただきました.
御本人は,左翼と仰っておりますが,大変参考になりました.
載せても構わないと仰られているので,掲載いたしました.有難うございました.