青島節

添田唖蝉坊 作詞  神長瞭月 作曲


青島(チンタオ)よいとこと 誰(た)が云ふた
うしろ禿げ山 まへは海
尾のない狐が 出るさうな
僕も二三度 だまされた
ナッチョラン ナッチョラン

命捧げて 居りながら
彈丸(たま)がドンと來りや 一寸(ちよつと)かゞむ
卑怯でかゞむぢや ないけれど
青島とらずに 死なれよか
ナッチョラン ナッチョラン

下士官の傍行きや メンコ臭い
伍長勤務は 生意氣で
粋な上等兵にや 金が無い
可愛い新兵さんにや 暇が無い
ナッチョラン ナッチョラン

大黒帽子に ペンダント
子供のよだれかけ あべこべに
風呂敷たゝんで 襟かざり
粋で無邪氣な 水兵さん
ナッチョラン ナッチョラン

馬上ゆたかに 吾輩が
竝(並)ぶ將兵 見おろして
風にはためく 聯隊旗(連隊旗)
クシャミひとつで 目がさめた
ナッチョラン ナッチョラン

私のスーチャン 水兵さん
十七八から 志願して
滿期になるのが 二十五六
男ざかりは 波の上
ナッチョラン ナッチョラン

親も妻子(つまこ)も ふり捨てゝ
わたしや兵士に なりました
泣き泣き 三年勤め上げ
歸(帰)りや わが家に雨が漏る
ナッチョラン ナッチョラン





元は演歌で,以下の通り.節も違った.

青島節

青島よいとこと 誰がいふた
うしろ禿げ山 まへは海
尾のない狐が 住むさうな
僕も二三度 だまされた
ナッチョラン 

青島の山から 見下ろして
あの海越ゆれば わが日本
さぞや凱旋 待つであろ
僕は青島の 守備となる
ナッチョラン 

大黒帽子に ボンネット
子供のよだれかけ あべこべに
風呂敷たゝんで 襟かざり
粋で無邪氣な 水兵さん
ナッチョラン 

早く歸つて 頂戴と
送る浪さん 逗子の濱
わたしや お客を送るとき
背中叩いて 舌を出す
ナッチョラン 

學校へ 通つて居る内は
卒業々々と 待つて居たが
卒業してみりや つまらない
またも氣になる 就職口(つとめぐち)
ナッチョラン 

親も妻子も ふり捨てゝ
わたしや兵士に なりました
泣き泣き 三年つとめあげ
歸りや わが家に雨が漏る
ナッチョラン 

あゝ つまらないつまらない
今日から かせぐのやめにしよ
見やれ 日比谷の議事堂で
居ねむり駄賃が 二千圓(円)
ナッチョラン 

女優が牡丹の 花ならば
洋妾(ラシャメン)なんぞは バラの花
後家は野菊で 尼は蓮花(はす)
下女は南瓜(かぼちや)の 花かいな
ナッチョラン 

女事務員が 柳なら
女詩人は 花すみれ
女教師が 蘭の花
女工が へちまの花かいな
ナッチョラン 

哀れなるかな 床の番
寢ようとしても 眠られず
まなこパチパチ 高いびき
狸みたよな ものかいな
ナッチョラン 


[刀水書房 演歌の明治大正史より]
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