月下の陣

永井建子 作詞作曲


月下の陣

宵の篝火(かゞりび) 影うせて
木枯らし吹くや 霜白く
夜は更け沈む 曠野原(ひろのはら)
駒も蹄(ひづめ)を くつろげつ
音なく冴ゆる 冬の月
楯を褥(しとね)の ものゝふは
明日をも知らで 草枕
夢は何處(いづこ)を めぐるらむ

晝(ひる)の戰ひ 烈(はげ)しさに
當(当)るを得手と 斬りまくり
思ふが儘(まゝ)の 手柄して
今宵は此處に 宿り木の
身はまだ解かぬ 鎧下(よろひした)
上ゆく雁(かり)に 夢やぶれ
そゞろに見やる 故郷(ふるさと)の
雲井はるかに かゝる月

國を思へば 雄心(をごころ)に
家は忘れて 魂(たま)きはり
たゞ身ひとつを なき數(数)に
入(い)る峽(さ)の山の 月影を
水に掬(むす)びて 明日はまた
刀の目釘 つゞくまで
腕によりをば 懸け襷(だすき)
華々しくぞ 戦はむ





「元寇」の後に発表された曲.
伊国の歌劇の合唱曲が下敷きになっている.
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