紅萠ゆる丘の花
三高逍遥の歌

沢村胡夷 作詞  K.Y. 作曲



紅萠ゆる 丘の花
早緑(さみどり)匂ふ 岸の色
都の花に 嘯(うそぶ)けば
月こそかゝれ 吉田山

緑の夏の 芝露に
殘れる星を 仰ぐ時
希望は高く 溢れつゝ
我等が胸に 湧(わき)返る

千載秋の 水清く
銀漢空に さゆる時
通へる夢は 崑崙(こんろん)の
高嶺の此方 ゴビの原

ラインの城や アルペンの
谷間の氷雨 なだれ雪
夕(ゆふべ)は辿る 北溟(ほくめい)の
日の影暗き 冬の波

嗚呼故里よ 野よ花よ
こゝにも見ゆる 六百の
光も胸も 春の戸に
嘯き見ずや 古都の月

それ京洛(けいらく)の 岸に散る
三年(みとせ)の秋の 初紅葉
それ京洛の 山に咲く
三年の春の花嵐

左手(ゆんで)の書(ふみ)に うなづきつ
夕の風に 吟ずれば
砕けて飛べる 白雲の
空には高し 如意ヶ嶽(によいがたけ)

神樂ヶ丘(かぐらがおか)の 初時雨
老樹の梢 傳(伝)ふ時
檠灯(けいとう)かゝげ 口誦(ずさ)む
先哲至理の 教へにも

嗚呼又遠き 二千年
血潮の史(ふみ)や 西の子の
榮枯の跡を 思ふにも
胸こそ躍れ 若き身に

希望は照れり 東海の
み富士の裾(すそ)の 山櫻
歴史を誇る ニ千載
神武の子等が 立てる今

見よ洛陽の 花霞
櫻の下の 男(を)の子等が
今逍遥(せうえう)に 月白く
静かに照れり 吉田山





三高は京都市に会あった.
逍遥とは散策の意味である.

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