日本陸軍

大和田建樹 作詞  深澤登代吉 作曲


(出陣)
天に代りて 不義を討つ
忠勇無雙(双)の わが兵は
歡呼の聲(声)に 送られて
今ぞ出で立つ 父母の國
勝たずば生きて 還らじと
誓ふ心の 勇ましさ

(斥候)
或いは草に 伏し隱れ
或いは水に 飛び入りて
萬死恐れず 敵情を
視察し歸(帰)る 斥候兵
肩に掛(かゝ)れる 一軍の
安危はいかに 重からん

(工兵)
道なき方に 道をつけ
敵の鐵(鉄)道 うち毀(こぼ)ち
雨と散りくる 彈丸を
身に浴びながら 橋かけて
わが軍渡す 工兵の
功勞何にか 譬(たと)ふべき

(砲兵)
鍬取る工兵 助けつゝ
銃取る歩兵 助けつゝ
敵を沈默 せしめたる
わが軍隊の 砲彈は
放つに當(当)らぬ 方もなく
その聲天地に 轟けり

(歩兵)
一齊射撃の 銃先に
敵の氣力を ひるませて
鐵(鉄)條網も ものかはと
躍り越へたる 壘上に
立てし譽れの 日章旗
みなわが歩兵の 働きぞ

(騎兵)
撃たれて逃げゆく 八方の
敵を追ひ伏せ 追ひ散らし
全軍殘らず うち破る
騎兵の任の 重ければ
わが乘る馬を 子のごとく
いたはる人も あるぞかし

(輜重兵)
砲工歩騎の 兵強く
連戰連勝 せしことは
百難おかして 輸送する
兵糧輜重(しちょう)の たまものぞ
忘るな一日 おくれなば
一日たゆたふ 兵力を

(衞生隊)
戰地に名譽の 負傷して
收容せらるゝ 將卒の
命と頼むは 衞生隊
ひとり味方の 兵のみか
敵をも隔てぬ 同仁の
なさけよ思へば 君の恩

(凱旋)
内には至仁の 君ゐまし
外には忠武の 兵ありて
わが手に握りし 戰捷の
譽は正義の 勝鬨ぞ
謝せよ國民 大呼して
我が陸軍の 勳功(いさをし)を

(平和)
戰雲東に をさまりて
昇る朝日と 諸共に
輝く仁義の 名も高く
知らるゝ亞細亞(アジヤ)の 日の出國
光めでたく 仰がるゝ
時こそ來ぬれ いざ勵め





 支那事變勃発後は,出征兵士を送る歌として広く用いられた.
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