敵は幾萬

山田美妙齋 作詞  小山作之助 作曲


敵は幾萬

敵は幾萬 ありとても
すべて烏合(うがふ)の 勢なるぞ
烏合の勢に あらずとも
味方に正しき 道理あり
邪はそれ正に 勝ち難く
直は曲にぞ 勝栗の
堅き心の 一徹は
石に矢の立つ ためしあり
石に立つ矢の ためしあり
などて恐るゝ 事やある
などてたゆたふ 事やある

風に閃く 聯(連)隊旗
しるしは昇る 朝日子よ
旗は飛びくる 彈丸に
破るゝほどこそ 譽れなれ
身は日の本の つはものよ
旗にな愧(は)ぢそ 進めよや
斃(たふ)るゝまでも 進めよや
裂かるゝまでも 進めよや
旗にな愧ぢそ 恥ぢなせそ
などて恐るゝ 事やある
などてたゆたふ 事やある

敗れて逃ぐるは 國の恥
進みて死ぬるは 身の譽れ
瓦となりて 殘るより
玉となりつゝ 碎けよや
疊の上にて 死ぬ事は
武士の爲すべき 道ならず
骸(むくろ)を馬蹄(ばてい)に 懸けられつ
身を野晒(のざらし)に なしてこそ
世にものゝふの 義といはめ
などて恐るゝ 事やある
などてたゆたふ 事やある





「などてたゆたふ事やある」の部分以外は,ヨナ抜き(4音(ファ)と7音(シ)を抜いた音階)であり,
軍歌としては初だった.
なお,同旋律を用いた曲があるので転載する.


進め矢玉

中村秋香 作詞


進め 矢玉の雨の中
飛び込め 劍(剣)の霜の上
わが日の本の 國の名を
世界に揚ぐるは 今日なるぞ
血をもて色どれ 日の御旗
骨もて固めよ 國の基
必死を究めし つはものの
背にこそ凱歌は 負はるなれ
背にこそ凱歌は 負はるなれ
飛び込め 劍(剣)の霜の上
進め 矢玉の雨の中

來たり接(まじ)へよ 短兵戰
日本男子の 手を見せん
來たり味はへ 日本刀
水も溜らぬ さま見せん
これぞ義勇に 育ちたる
國の戰の 土産物
コの春風 あたたかに
威の秋の霜 肌寒く
わが日の本の 名と譽れ
あまねく諸國に とゞろかせ
廣く世界に 輝かせ


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